前回に引き続きミック・ジャガーのソロ・シングル『Memo From Turner/Natural Magic」です。今回はヨーロッパ諸国の残りの国とオセアニア州のレコードを紹介します。最初はイタリア盤です。イタリアでは1970年10月に発売され、規格番号はF 13067です。イタリアも独自のピクチャースリーヴが付けられています。ミックのアップの写真と左上に69年ハイドパークでのミックの写真があります。このハイドパークの写真は反転しています。後で紹介する同じ写真を使ったスペイン盤から考えておそらくこの大きな方のミックの写真も反転していると思います。左上にDECCAのロゴと規格番号があり、タイトル等は左下に書かれています。タイトル以外の個所は全てイタリア語で書かれています。
裏側です。下半分はディスコグラフィとなっています。
ラベルです。ボックストデッカのロゴの右下にDECCA DISCHI ITALIA S.p.A.とあります。直訳するとデッカ・レコード・イタリア株式会社でしょうか。左側にⓅ1970、右側にマトと規格番号があります。マトリクスは機械打ちでXDR 47868-T1-1C/XDR 47869-T1-1Cです。これはUK盤のマトと同じです。
こちらはジュークボックス用のシングルで白ラベルとなっています。文字の配置はレギュラー盤と同じですが、規格番号は45-F JBS 38となっています。B面はデイヴ・エドモンズの「I Hear」が収録されています。マトリクスは機械打ちでXDR 47868-T1-1C/XDR 48208-T1-1Cです。これはレギュラー盤と同じマトです。
ジュークボックス用のストライプです。
スペイン盤です。スペインでは1970年10月に発売され、規格番号はMO 1051です。イタリア盤と同じミックのアップの写真が使われていますが、イタリア盤とは写真の向きが逆です。イタリア盤のハイドパークでの写真から考えてこちらのスペイン盤の方が反転ではなく正しい写真だと思います。上部にアーティスト、曲目がまとめて書かれており、DECCAのロゴと規格番号は左下にあります。
裏側です。こちらはタイトルと曲目だけのシンプルなデザインとなっています。
ラベルです。ボックストデッカのロゴのラベルです。左側にマト、規格番号、面表記などがまとめて書かれています。面表記はCara 1です。マトリクスは手書きでXDR 47868-1J MO-1051-A/XDR 47869-1J MO-1051-Bです。
B面のラベルです。スペイン盤もアーティスト名がMICK JAGGERとなっています。
ギリシャ盤です。ギリシャでは1970年10月に発売され、規格番号は45-GD-5172です。ギリシャ盤はピクチャースリーヴは元々無くギリシャ・デッカ専用のカンパニースリーブに入っています。他のストーンズのギリシャ盤もこのカンパニースリーブに入っています。
ラベルです。ボックストデッカのロゴの左下にMADE IN GREECEがあります。左側にマトとMirage Musicが、右側に規格番号があります。B面のクレジットはMICK JAGGERでもInstrumentalでもなく空欄になっています。マトリクスは機械打ちでXDR 47868/XDR 47869です。
オーストラリア盤です。オーストラリアでは1969年11月に発売され、規格番号はY-9312です。オーストラリアではピクチャースリーヴが付けられず、専用のカンパニースリーブに入っています。UK盤の青の渦巻スリーヴと似ていますが、上部両端が丸くカットされているのが特徴です。オーストラリア/ニュージーランドでのデッカの販売元はEMIで、スリーヴとラベルにEMIの記述があります。
ラベルです。ボックストデッカのロゴの左下にMADE IN AUSTRALIAがあります。右側に回転数、規格番号、マト、タイム表記があります。B面のクレジットはnstrumentalです。マトリクスは手書きで7X DEC1456 XDR 47868/7X DEC1457 XDR 47869です。
プロモ盤のラベルです。前面に大きくAの文字があります。センターの下にSample Record-Not For Saleがあります。それ以外の文字の配置等はレギュラー盤と同じです。マトリクスは手書きで7X DEC1456 XDR 47868/7X DEC1457 XDR 47869です。オーストラリア・デッカのカンパニースリーブに入っています。
ニュージーランド盤です。ニュージーランドでは1970年10月に発売され、規格番号はDEC. 524です。ニュージーランドでは元々ピクチャースリーヴが付けられず、カンパニースリーブに入っています。UKデッカのカンパニースリーブと似ていますが色が微妙に違いこちらは薄い青というか群青色?となっています。
ラベルです。ボックストデッカのロゴの左下にMADE IN NEW ZEALANDがあります。センターホールよりも上にタイトルがあります。左側にマトが、右側に規格番号とⓅ1970があります。下部の四角い枠の中はCopyright controlと書かれています。これは著作権管理という意味です。マトリクスは手書きでXDR 47868-2 NZBC/524Bです。
B面のラベルです。B面のクレジットは他の国ではMICK JAGGERかInstrumental、または空欄になっていましたがニュージーランド盤ではJACK NITZSHE & HIS ORCHESTRAとなっています。このクレジットはニュージーランド独自のものです。
こちらはメキシコ盤のプロモとの触れ込みですが、多分フェイク・レコードです。ミックの「Memo From Turner」はヨーロッパ、日本、オセアニアで発売されましたがアメリカ大陸では発売されておらず、メキシコでもこのシングルは発売されていません。メキシコでは最近正規盤でも新たなピクチャースリーヴを勝手に付けて販売するこういったフェイクものが多いのであえてここで取り上げます。最近でも「Honky Tonk Women」の中のレコードは本物でピクチャースリーヴだけ新たなデザインの偽物が出回っていました。このシングルは名義がミックではなくローリング・ストーンズとなっています。規格番号の45/9819というのはメキシコ盤の「Little Queenie」が9818なのでそのひとつ後という事になっています。映画のワンシーンと思われる写真が使われています。
裏側です。こちらは2曲共ストーンズの曲のようなクレジットとなっています。
ラベルです。メキシコ・ロンドンのプロモ盤を模しています。ラベルではちゃんとMICK JAGGERとなっています。マトリクスは手書きで45-9819-B/45-9819-Aと何故か「Natural Magic」の方がA面のようなクレジットとなっています。ただ、このラベルを見るとカビがあったりと、当時作られたもののような気になってしまいます。メキシコ盤のフェイクものはジャケットは偽物でもレコードはレギュラー盤というパターンもありますがおそらくこのプロモ盤はレギュラー盤が存在しないのでフェイクものだと思いますが…。
B面のラベルです。アーティスト名のところはInstrumentalとなっています。マトの部分は45/9819Aとなっています。こちら側にOKと書き込みがあるのでこの曲の方をプッシュしていたといった感じですが、こういった書き込みをして本物っぽく見せたのでしょうか?
「Memo From turner」はストーンズのメンバーとしては初のソロ曲ですが、当時の各国での反応はどうだったのかよく分かりません。日本では当時ラジオであまりオンエアされなかったようです。サウンドもストーンズとは違い、私は70年代に初めてこの曲を聴いたとき何となく違和感だったのを覚えています。この当時のミックのソロはこの他に映画Ned Kelly(邦題:太陽の果てに青春を)の挿入歌「The Wild Colonial Boy」があります。こちらはサウンドトラック盤に収録されただけでシングルでは発売されませんでした。その後は85年の『SHE'S THE BOSS』とかなり後になってしまいます。
ここまで3回に分けてミックの「Memo From Turner」を紹介してきましたが、このシングルの面白い所は各国でピクチャースリーヴのデザインが全く違うという事です。各国自由なデザインでそれぞれ特色があっていい時代でしたね。80年頃からこういった独自のデザインはなくなってしまい各国共通のデザインになってしまい面白みが半減してしまいましたね。