ローリング・ストーンズ アナログ盤蒐集生活!

ただひたすらにローリング・ストーンズのレコードを紹介しているブログです。

ローリング・ストーンズ 3種類のテスト盤から考える『NO STONE UNTURNED』の曲目が決まるまで!!  

ローリング・ストーンズの73年に発売されたUK編集盤『NO STONE UNTURNED』というアルバムがありますが、このアルバムに関連するテストプレスはナント3枚も存在します。そのテストプレスは規格番号も収録曲もそれぞれ違い、その中の1枚はタイトルが全く違うものになっています。現存する3枚のテストプレスから考えるとこのアルバムは最終の曲目が決まるまでに3回も収録曲が変更となっているのが分かります。今回はこのアルバムのテストプレスの収録曲を基に曲目がどう変わっていったのかをまとめてみようと思います。これはあくまで私の考えた仮説で、正式な資料ではありませんのでご了承ください。

最初のテストプレスです。ここではテスト1とします。ラベルに手書きで『NO STONE UNTURNED』と規格番号のSKL 5165と書かれています。後に正式に発売された『NO STONE UNTURNED』はSKL 5173なので全く違う規格番号が書かれています。

A面の曲目は

Off The Hook、Play With Fire、Who's Driving Your Plane、The Spider And The Fly、Dandelion、Ruby Tuesday

B面の曲目が

Little By Little、The Singer Not The Song、Child Of The Moon、As Tears Go By、Stoned、You Can't Always What You Want

テスト1は後に正規発売された曲目とは違うものとなっており、売れるように考えたのかB面曲でも両A面扱いだった「Dandelion」「Ruby Tuesday」「As Tears Go By」「You Can't Always What You Want」とけっこう有名曲が加わっています。のちの正規盤に収録される曲はテスト1では「Who's Driving Your Plane」「The Singer Not The Song」「Child Of The Moon」「Stoned」の4曲だけとなっています。マトリクスは機械打ちでXEAL-12364-P-1W/XEAL-12365-P-1Wです。後に正規盤として発売された『NO STONE UNTURNED』のマトはXEAL-12555-P-1W/XEAL-12556-P-1Wなのでこのテスト1のマトは全く違うものです。

B面のラベルです。

A面のマトリクスです。

B面のマトリクスです。

ここからは新たなテストプレスで、ここではテスト2とします。ラベルに『GOLDEN B SIDES』という別のタイトルが書かれており、規格番号はテスト1同様SKL 5165と書かれています。このテストプレスはDiscogsに載っていますが、規格番号はSKL 5166となっています。実はこのレコード、数年前に買ったのですが海外から届いた時に包みが下の写真のように折れ曲がっていました。薄いペラペラな段ボール2枚でレコードを挟んであっただけなので嫌な予感がして梱包を開けるとレコードは真っ二つに折れていました。その時の小包の写真です。

海外から輸入したレコードが折れて届いたのはこの時が2回目でしたがその時のショックは今でも忘れられません。何で補強材も入れずに頑丈な梱包で発送してくれなかったのかと送り主に抗議しましたが、折れてしまったレコードはもう元には戻りません。テストプレスは値段が高いですが、この時は値段よりも少数しか存在しないテストプレスという貴重なものがこんな状態になってしまった、という哀しみの方が大きかったですね。しかも没になったレコードのテストプレスです。このタイトルで検索すると何枚かこの筆跡の画像が出てきますが、このレコードはもうこの世に存在していません。レコードを集め始めて50年間で一番ショックでした。画像は割れたものをくっつけて撮ったもので、ラベルが無残にも破れてしまっています。このレコードは出品者に返品したため今は手元にはありません。実は私のストーンズ蒐集はこのレコードがウォント・リストに最後に残った1枚だったので、このレコードをオーダーした時点でストーンズのコレクションが揃った、と思ったのですが夢は叶いませんでした。話がずれましたが、規格番号はテスト1同様SKL 5165と書かれており、『NO STONE UNTURNED』は規格番号がSKL-5173なのでそれよりも前の番号となっています。お蔵入りになったためこの番号での正規盤は存在しません。

曲目はA面が

Off The Hook、Play With Fire、Who's Driving Your Plane、Long Long While、2120 South Michigan Avenue、Natural magic (from the film Performance)

B面の曲目は

Little By Little、Pinson Ivy、The Singer Not The Song、Stoned、Good Times、Child Of The Moonの6曲です。 

テスト1と最初の3曲は同じ曲順ですが、その後の「The Spider And The Fly」「Dandelion」「Ruby Tuesday」「As Tears Go By」「You Can't Always Get What You Want」が外され、「Long Long While」「2120 South Michigan Avenue」「Natural Magic」「Pinson Ivy」「Good Times」が追加されています。テスト2の『GOLDEN B SIDES』というタイトルや、テスト1とテスト2の曲目を見るとデッカはどうやらシングルB面の曲を集めた内容でアルバムを作ろうとしたのではとかんがえられます。しかし、レア度を高めようとしたのかミックでもストーンズでもない「Natural Magic」が入っているのがなんだかなぁ~という感じですね(笑)。マトリクスはラベルにXEAL-12364-P-1W/XEAL-12365-P-1Wとテスト1と同じマトが書いてありますがランナウト・グルーヴに書かれたマトは全く違うもので線で消したものとなっています。この他には何も書かれていなくて、このテストプレス独自のマトはありません。こちらのテストプレスを制作する際にマトを間違えて打ってしまい消したものと思われます。ちなみにDiscogsにもこのテストプレスのマトは載っていません。

B面のラベルです。

マトの部分です。ラベルに書かれたマトとは全く違うマトが書かれており線で消してあります。XEAL-14194.P-1Wとも見えます。

ここからテスト3です。3枚目のテストプレスは正規に発売された『NO STONE UNTURNED』と同じ内容です。タイトルを『NO STONE UNTURNED』にしようか『GOLDEN B SIDES』にしようか迷ったのかこのテスト3にはタイトルが書かれていません。規格番号もSKL 5173と正規盤と同じ番号になっています。マトリクスはそれまでのテストプレスとは違い機械打ちでXEAL-12555-P-1W/XEAL-12556-P-1Wと変更となっています。このマトは正式に発売された『NO STONE UNTURNED』のマトと同じです。

曲目はA面が
Poison Ivy、The Singer Not The Song、Sueprise Surprise、Child Of The Moon、Stoned、Sad Day

B面の曲目は

Money、Congratulations、I'm Moving On、2120 South Michigan Avenue、Long Lone While、Who's Driving Your Plane です。

テスト2から「Off The Hook」「Play With Fire」「Natural Magic」「Little By Little」「Good Times」が外され、「Surprise, Surprise」「Sad Day」「Money」「Congratulations」「I'm Moving On」が追加されています。「Natural Magic」が外されたのは当然として、当初のB面を集めたアルバムと思われるコンセプトとは違う「Surprise, Surprise」やライヴの「I'm Moving On」が収録されているため内容が散漫になってしまったような気がします。個人的にはテスト2の『GOLDEN B SIDES』とタイトルが付けられたテストプレスの選曲がマニアックでよかったのではと思います。再度言いますが、ここまでの曲目の移り変わりは現存するテストプレスの曲目から考えたあくまで私の考えた仮説で、正式な資料ではありませんのでご了承ください。

B面のラベルです。

マトリクスです。これは正規盤『NO STONE UNTURNED』と同じマトです。

B面のマトです。こちらも正規盤と同じマトです。

テストプレスはそれぞれデッカの青いインナーに入っていますが、ここで正規盤『NO STONE UNTURNED』のジャケットを載せておきます。

以前紹介したUK盤『NO STONE UNTURNED』のページはこちらです↓
ローリング・ストーンズ UK盤 NO STONE UNTURNED いろいろ!! - ローリング・ストーンズ アナログ盤蒐集生活! (jukeboy-stones.com)

結局正規発売されたアルバムまでに3回も曲目が変わったアルバムですが、ストーンズがデッカから離れてしまった後、とにかく売れさえればいい編集盤を作るために試行錯誤した結果でしょうね。もし、B面曲だけで通したら結構レアなアルバムになったと思います。デッカは71年の『Stone Age』から73年のこの『No Stone Unturned』まで5枚もの編集盤を乱発しており、ストーンズ側から買わないようにと広告を出されたりしてひんしゅくを買ったりしていましたが、当時はアルバム未収録の曲やそれまでイギリスで発売されていなかった曲もありファンにとっては重宝したと思います。今回紹介したテストプレスは発売されず幻に終わってしましましたが、UK盤でテストプレスのみで正規発売されなかったレコードはこの他に『ROLLED GOLD』の後に発売予定だったライヴ盤の『GOT LIVE IF YOU WANT IT』と『GET YER YA-YA'S OUT』をカップリングした2枚組があります。規格番号も『ROLLED GOLD』のROST 1/2に続くROST 3/4でテストプレスだけが存在します。これはイギリスでは没になりましたが、ドイツでは規格番号は違いますが76年にこれと同じ内容で正規発売されています。日本でもそうですが手を変え品を変え編集盤を出し続けたデッカの商売根性はすごいものですよね!